イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

イメージ 7

イメージ 8

イメージ 9

イメージ 10

イメージ 11

イメージ 12

もうかれこれ15年近くチュークに通い続けている釣りのお祭りアラカン軍団がある。
通称・『ワカジキ軍団』

ワカサギを出でてカジキに至る。
釣りの王道と海遊びの王道を極めたハチャメチャ釣り仲間だ。
チュークの海と自然を潤滑剤に、今も遊びに仕事にせっせと精を出している。
そしてこの4月、歴代の隊長も今年で3人目を迎え、満を持してのチューク遠征が始まった。
ご隠居となった2人の元隊長も若い者(??)に負けじと、連日、酒を煽り竿を振り続けた。

通常、釣り客はどのような釣りをするかおおよそ決まっている。
例えば、あるグループは餌釣り(底釣り)のみ、またあるグループはキャスティングのみ、
あるいはトローリングのみ、そしてジギングのみ、、、といった具合である。

ところが、この軍団ときたら全部の釣りをしなくては気がすまない。
1日の短い時間の中で全ての釣りをして、しかも、、、しかもだ、全てに釣果を求める・・・。
なんと欲張った、そして、なんと楽しい、何ともガイド冥利に尽きる人たちなのである。
対するこちらも楽しくない訳が無い。
否応もなくテンションは上がる。
毎日あの手この手を駆使して軍団の要望に応えることは、私の最も得意とするところであり、最上の喜びでもある。

果たして1週間に及ぶ軍団の釣りが始まった。
まずは夜の宴の肴の確保だ。
この軍団ときたら決してレストランなんぞでは食事はしない。
自分たちの釣った魚を肴に1週間、連夜のドンチャン騒ぎだ。
この日も、餌とサビキの釣りからスタートする。
途端に、釣れるは釣れるは、あっという間に大きなクーラーボックスが高級魚で
満たされる。
宿題が終わった後は、ジギング、キャスティング、トローリング、で心置きなく大物に挑戦する。
連日がこのパターンである。

そうして迎えた終盤の5日目。
前日は無人島キャンプで焚き火を囲み、酒を酌み交わし、大自然の中で心身ともにリフレッシュ。
大いに英気を養った。
今日は殆どが外洋コースで、大物を狙える。
特に今年から新隊長を承ったグンテ橋本(大きなゴツイ手からこの名がある)には、心中密かに期するところがあった。
前回の遠征、、、幾度となく大物をヒットさせながら、ことごとく逃げられてしまった悔しい思い・・・。
今朝もキャンプ明けの早朝からキャスティングの練習に余念がない。

いつも通り、午前中の釣りで夜の宴会用の魚はすでに充分確保してある。
今日のお昼は外洋のリーフにボートをアンカーしての休息だ。
このような場所はキャスティングで大物が狙える格好のポイントでもある。
少ない時間の中で少しでも効率よく釣りをしてもらいたい、という思いからこのポイントにアンカーさせた。
そして、みんながお弁当を食べ終わった頃、さりげなくみんなに話をする。
『ここは360度、どこに投げてもいいよ。きっとカスミかGTがヒットするよ!』

グンテは黙ってキャスティングロッドを握った。
すでにルアーはこのような時のためにセットしてある。
まず第1投、何かが追いかけてくる。
でもヒットしない。
その後も黙々と投げ続けるグンテ隊長。
みんなは食後のリラックスタイムを楽しんでいる。
その時、グンテ隊長の大きな声が船上に響いた。

『来た~~~!!』
『重い! 重い!』ひたすら叫んでいる。
『巻けェ~、巻けェ~! ドンドン巻けェ~~!』と、私。
『GTだ! ここは浅い、根にはいられるぞ!ドンドン巻け!』 
『前にアンカーロープもあるぞ! 下に降りろ!』
矢継ぎ早に発する私の言葉と命令にイチイチ頷きながら、それでも必死に堪えて格闘するグンテ隊長。
『重い!』『重い!』何度も叫ぶ。
透明な外洋の水の中に徐々に姿を見せる怪魚。
GT(巨大ローニンアジ)とばかり思い込んでいた私の目に、異様な魚の光景が映った。

魚は2匹いる!
なぜだ??
サメが魚を襲ったのか?? よくある光景だ。
いや、違う。1匹は大型のカスミアジだ。泳いでいる。無事だ。
では、あとの1匹は??
巨大なハタか?? いやこれも違う。色が違う。
軍団一の怪力を有するグンテ隊長にかかったのが幸いした。
魚がだんだんと水面に近づいてきた。
『ナポレオンだ!!』『ナポレオンとカスミだ!!』
『2匹いる、2匹いるぞ!!』

大きなポッパー(ルアー)には2対の大きな針が付いている。
その2本の針にそれぞれ魚がヒットしたのだ。そうそうあることでは無い。
しかもその1匹が滅多には釣れないナポレオンと来ている。
奇跡の釣りだ。
トンデモない物が釣れた、と判ったグンテの腕に一段と力が入る。
船端に怪魚の姿が現れた。
ボートの中はもうテンヤワンヤの大騒ぎだ。

ナポレオンの大きな硬いウロコがギャフの先を容易には通してはくれない。
逃がしてなるものか!!
やっとの思いでナポレオンのエラの部分にギャフの切っ先が刺さった。
何人もで船上に引き上げる。
拳で天を突いて喜びを爆発させるグンテ橋本。
エンペラー橋本、誕生の瞬間だ。

軍団にまた1つの勲章が加わった。
そして軍団の絆がまた一段と強く深くなった。

今もあの時のことを思い出しては1人、ニヤニヤしている。
日本で会うのが楽しみだ。