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8月7日(火)夜、日本のTV製作会社から緊急の電話が入った。
『仰天ニッポン滞在記』のロケをもう一度チュークでやりたいと言う。

放送予定のマレーシアロケが突然中止となり、急きょお鉢が回ってきた。
2時間の特番だ。
番組に穴を空けれないため放映日は予定通り、9月2日と動かせない。
しかも5日後には取材班を送り込み、現地ロケを済ませて19日には現地家族を日本に連れて行き1週間の日本ロケを敢行すると言う。

と言う事は、明日からボートで離島を駆けずり廻り対象家族を探し出し(中途半端はダメ、あくまでも番組受けする家族が絶対条件だ)、モエン島に連れてきて、戸籍制度も無い人達4名のパスポート申請書を作成し、ポナペに行ってパスポートと日本のビザを取得し、日本往復航空券を購入するまでに、1週間しか時間が無いと言う事になる。
しかも間に土・日が入っている。
絶対に不可能な事だ。
これらの条件を満たすには、こちらのペースで少なくとも1か月半は要する。

断るべきか・・・。

制作会社も今回の件では絶対に穴を空ける訳にはいかず、社運を懸けているという。
実は前回チュークの同様の番組がとても好評で、私の存在を知って頼ってきた感がある。
断るわけにはいかない!!

その夜から妻の薫と2人、阿修羅の如き動きが始まった。
あまりにも時間が無いため、当初はパスポート取得家族に的を絞った。
早朝から丸1日掛けて環礁内の島々を駆けずり回るが、パスポートを取得している者達は、番組の趣旨に会う人たちではない。
貴重な1日が無駄に終わる。しかし妥協は許されない。

その日の夜から非取得者に的を絞り対象家族を選び出す。
2日目・3日目と、対象家族を絞り込み、現地ロケハンを行い、家族をモエン島に連れてきて申請書類作成の為の基本的な書類つくりから始まる。
戸籍も無い。生年月日をまともに知らない。名前は適当に付けてある。
パスポートを作るには厳正な書類審査が必要だ。
やっと書類を作っても何度も何度もやり直しが続く。
それもそのはず、1週間で作る書類を1日でやろうとしている。

3日目に絶体絶命の危機に見舞われる。
書類がおかしいので家族全員をもう一度離島から連れて来いと言われる。
来週もう一度やり直すと言う。
戸籍制度の無いチューク人のいつものトラブルだ。
そんな事をしていては、書類つくりだけで日程は終了する。

何度も行き来した裁判所の前の階段に2人で座り込んだ。
頭の中は真っ白・・・、胸の中は暗黒の闇・・・。
出来ないものは出来ない・・・。
『日本に断ろう!』
でもどう言って断れるのか・・・。

挫折感に打ちのめされ一度はあきらめかけたたこの絶対絶命の危機を救ってくれたのは、私たちを信じてくれた現地の友人達だった。彼らの協力でこの逆境を切り抜け、やっと基本的書類作成が完了する。
後は申請書類を作成し、全書類を携えてポナペに飛び、パスポートと日本のビザを取得する事だ。
しかしこれが一番厄介な時間の掛かる事だ。
チューク在住30年の人脈や経験・知識を総動員してこれを何とかクリアーする。
期限内にすべてを完了し、全員のパスポートと日本のビザ取得に成功した。
その離れ業にみんなが一応に驚いている。

何度も何度も絶体絶命の危機に見舞われた。
その都度、現地の知人・友人達に助けられた。
今回ほど長く住んでいる事を自分自身頼もしく嬉しく思った事は無い。

そして製作会社の方達もまた、ロケが終わってたったの5日間で、この2時間の長い番組を作り上げた。
最後は徹夜の連続だったと言う。

多くの人達の協力と努力でこの番組が出来上がったのだ。
局内では奇跡の番組と言っている。
番組は好評で、多くの人達から激励のメールやコメントを頂いた。
1日も早く現地の家族にも見せてあげたい。