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男性2名・女性1名の楽しい3人組のグループがチュークにやってきた。
妻のカオルが電話でツアーのご相談を受け、とりあえずは島内観光に行く事となった。

お会いしてみると初対面からテンションが高く、どちらかと言うといつもおふざけモードの私の好みにぴったりの方たちである。
もう一人の慰霊にいらしたおじいちゃんも巻き込んで賑やかな島内観光が始まった。
ご案内をしていて、楽しく仕事はできるのだが、3人組の今回のツアーの意図がいまいちはっきり掴めない。お客様の目的によって話す内容も若干変わってくるので、どうしたものかとちょっと考えていた。
そんな矢先、ツアーも半ばに差し掛かった頃メンバーの1人・s氏が、
『実は人を探しているんです。』と、1枚の紙切れを私に差し出した。
そこにはきれいな字で、現地人の名前が書いてある。

『実はこの人を探しているんですが、どうもうまくいかなくて困っています。』
『今回の旅行は、この人に会いに来たんです。』
『10年前に、彼が日本に研修に来ていて知り合いました。』
と丁寧に私に説明してくれる。
この話を聞いた時点で私は『ん・・・?』と頭にひらめくものがあった。
フレッドと言う男の名前にも覚えがあったがイマイチはっきりとは思い出せない。
その時にはまだそのことは伏せておき、ローカル市場を訪ねた時に、自分の頭の中に引っ掛かっていた疑問を知り合いの現地人にぶつけてみた。
すぐに反応があった。
もう戸口に来たようなものである。
あとはそのうちに行ってノックすればよかった。

『だいたい判りましたよ!』
『観光の時間内にはっきりお知らせします!』
私の言葉に3人は、『えっ!!・・・』と驚いた様子で、顔を見合わせていた。
昨日一日探し回っても糸口すら見いだせなかった現地友人の所在が、そんなに早くわかるものなのか??名前を書いた紙を見せて歩き回った自分たちの事も考えて3人は、半信半疑で私を見つめた。
観光の途中、尋ね人・フレッドの親戚の店に立ち寄り、かねてから知り合いの女に聞いてみた。
すべてが明らかになった。
フレッドは秋島(フェファン島)の高校で、日本語の先生をしていた。
今日のうちに秋島のフレッドに連絡(手紙を託送)を取り、明日の朝一番にこちらに来れるよう手筈を整えた。
勢いに乗った3人は、後半の島内観光が前にも増して賑やかなものとなった。

翌朝、ホテルで待つ3人の心に一抹の不安がよぎる。
『人違いだったらどうしよう・・・。』
一人の現地人が、ニコニコとして入ってきた。
そこには10年の年輪を刻んだフレッドの顔が確かにあった。
劇的なご対面が実現した。
手を取り合うs氏とフレッド。
あとの2人もニコニコ顔だ。
すでに予定が入っていた3人は、翌日フレッドの住む秋島を訪ねる約束をして彼と別れた。
ご対面を済ませた3人は、かねての予定通り無人島泊の旅へと出発した。

そしてチュークを出発する最後の日、迎えのフレッド達のボートで秋島に向かった。
予想だにしなかった大歓迎が彼らを待っていた。
熱帯のきれいな生花や貝殻でで作られた首飾りを1人・1人に掛けてもらう。
歓迎の席には、食べきれないくらいの現地のごちそうが並んでいる。
〝ホテルで朝ごはんを食べなきゃよかった!!”
3人の頭の中は、揃ってそう悔やんでいた。
たった一晩の間に、これだけの準備をして、歓迎してくれるなんて・・・・。
日本では考えられない心からの彼らのおもてなしに、胸が熱くなってくる。
『来年もう一度ここを訪ねて、御恩返しをしよう!』
3人は心の中でそうつぶやいていた。

今日はもう、日本に帰る日である。
あまりのんびりとはしてはいられない。
後ろ髪をひかれる思いで秋島を後にした。
空港に到着し、手続きを済ませる。
『さあ、いよいよチュークともお別れだ!』と、搭乗口に並んだ時、
一人の女性が3人の元に駆けてきた。
秋島の女性だった。
最後のお別れに駆けつけてくれたのだ。
そしてまた貝殻で作ったマラマーを一人一人に掛けてくれる。
3人の頭の中はもう真っ白になってしまった。
あふれてくる涙を必死に抑える。

優しくほほ笑む女の顔を3人は無言で見つめた。
・・・私たちはきっとまた帰ってくるよ!