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『椰子の木』 誰もが真っ先に思い浮かべる南国のイメージだ。
椰子の木には沢山の種類がある。通常我々が『ヤシの木』と言っているのは『ココヤシ』の事である。
南の島に普通に生い茂っているあのヤシの木だ。この椰子の木と、椰子の実は、南の島に住む人たちにとっては無くてはならぬ大変貴重なものだ。彼らにとってはまさに万能の植物と言える。

 椰子の実は、優れた飲料であり、食べ物でもある。飲み水の少ない小さな島々にあって、いつも新鮮な飲み物を提供してくれている。椰子の実の殻は優れた燃料ともなり、タワシや、ヤシロープの原料でもある。伝統的な大型カヌーや、ローカルハウスの建造には、今もこのヤシロープが使われる。
 枯れたヤシの葉っぱは大事な燃料となる。手馴れたチュークの女達は、ヤシの葉っぱ1本でヤカン1杯のお湯を沸かす事が出来る。大きな椰子の枯れ葉を束ねてタイマツを作り、漁火として夜の漁を行う。
遠浅の夜の海岸で手に手にこのタイマツをかざした漁火の風景は、チュークの1つの風物詩でもある。
 緑の葉っぱからは、農作業のバスケットや帽子などの装飾品もできるし、家の屋根や壁を葺く材料ともなる。無人島のキャンプ小屋などは、このヤシの葉っぱがあればあっという間に見事なものが出来上がる。
 椰子の木は真っ直ぐに伸びており、そのてっぺんに大きな傘のように葉っぱを広げている。緑の大きな葉っぱは灼熱の太陽をさえぎり、長く伸びた1本の幹は海からの涼しい風を運んでくれる。椰子の木は南の島の人達に心地よい安らぎの場所を提供してくれている。
                     
 椰子の木(ココヤシ)の寿命は、おおよそ人間の寿命と同じ位と言われている。そして、その成長の過程は驚くほど人間のそれに似ている。完熟した椰子の実は落ちて種になる。落ちる前の壮年期の種を我々は飲んでいる訳だ。落ちた椰子の実は、放っておくと1年位で芽が出てくる。5~6年経つと花を咲かせ実をつけ始める。一旦、実をつけ始めると、季節には関係なく次々と、60~70年の間ずっと実を付け続けている。その数は1年間でおおよそ100~200個にも及ぶ。
 遠き島より♪~♪、流れ来る、やしの実一つ♪~♪・・・・、島崎藤村の歌にあるこの椰子の実は、はるか何千キロも離れた遠い南の島から流れ着いたものだ。チュークの海をボートで走っていると、このように椰子の実が海に浮かんでいる光景によく出会う。まだ緑も無い小さな砂浜に、幾つもの椰子の実が打ち上げられて小さな芽を出している。やがて根を張り大きな椰子へと成長してゆく。小さかった砂浜は段々と大きさを増し、やがて1つの無人島が出来上がる。それら1つ1つの島は、南の島で生きる人達にとっては、かけがえのない財産だ。
 1個の椰子の実が人々に糧をもたらし、海に命をもたらす。今日もたくさんの椰子の実が、潮流に身を任せ見知らぬ世界へ旅をしている。 無人島の浜辺に寝転び、波の音と、椰子の葉のそよぎに耳を傾けている時、 この世に生きている幸せを心から感じる。