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南の島の海の中には様々な生き物達がいる。共存というサイクルの中で、助け合い、奪いあい、殺し合い、そうして生きている。貝もまた例外ではない。

鬼ヒトデはサンゴを食べて生きている。きれいなサンゴの上にどっかりとかぶさってサンゴを食い荒らしている姿は、どう見てもおぞましい限りだ。しかし、この鬼ヒトデを食べる貝がいる、と聞けばなんとなく嬉しく、その貝が頼もしく思えてくる。皆さんもよくご存知の『ホラ貝』だ。
英語名はそのものズバリ、『トランペットシェル』と呼ぶ。わが国でも、野武士や修行僧が空に向って“法螺を吹く”絵や写真を、よく目にした事がおありだろう。ここチューク地方でも、ホラ貝は大事な生活の道具として重宝されてきた。その独特の音は、戦いや、島々への合図などに使われたという。古式豊かに作られたチュークの法螺貝が私の家のリビングの壁にも掛かっている。

鬼ヒトデを食べる強い貝もいれば、タコに食べられるかわいそうな貝達も沢山もいる。比較的小さな二枚貝や巻貝などがその被害となっている。タコ穴の周りには、タコの餌食となったこれらの貝の残骸が沢山散らばっている。タコは島の周りの浅瀬で比較的簡単に獲ることができる。チュークの人達の大事な食糧でもある。ポリネシアの伝統的なタコ漁には宝貝の殻を使ったものがある。甲殻類や貝を好物とするタコの習性を利用したものだ。

貝の中には、貝を襲って生きているものもいる。通称、ツメタガイと言われているタマガイの仲間がそうである。小さな二枚貝や巻貝に、見事な穴があいているのを、よく見かけることがある。まるで、小型ドリルで開けたような見事な穴だ。これがツメタガイの仕業なのである。
貝に穴を開け、中身を吸い取って食べてしまう、貝のギャングである。ウズラの卵ほどの大きさの、光沢のあるとてもきれいな姿をしており、まさかこの貝が仲間の貝を襲うとは想像もできない。

海を泳いでいると、貝を食べている魚をよく見かける事がある。
そんな中で、ヒラアジがシャコガイを襲うという話が伝えられている。
ただ単に殻の中身を突っついて、食べると言うのではない。正に襲うという形容がピッタシだ。
目標のシャコ貝に狙いを定めたヒラアジは猛然と獲物に向って突進する。そして、自身の尻びれの部分にある鋭利に尖った突起をピンと立てて、口を大きく開いているシャコ貝の貝柱を一気に切断するのである。そうして、口を閉じれなくなったシャコ貝をゆっくりと賞味するという。電光石火の早業だ。

タコや魚に襲われる貝がある中で魚を襲う貝もいる。イモ貝の仲間だ。イモ貝の仲間には、毒腺を持つものが多く、その毒腺で小魚や海中生物を襲って食べる。特に、『アンボイナ貝』や『タガヤサンミナシ貝』は毒性が強く、人間の命を落とす程の猛毒を持つ。しかし、この猛毒を有する2つの貝は、貝収集家の間ではとても人気がある。

我が家にはこのような様々な貝のコレクションがある。長年私がチュークの海から丹精込めて集めてきた海の宝物である。様々なデザインを施した貝達が、その1つ1つにいろんな思い出を包んで、海の香りと彩りを与えてくれている。そしてそれは私のチュークの軌跡でもある。