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昨日の朝、隣のデュブロン島からあるお年寄りの女性が訪ねてきた。
『体がおかしくなった。これはあなたのせいだ!』といきなり私に突っかかる。
『去年の8月、あなたが連れてきた日本人達が私の所にやってきて、私に変な事をした。
その3日後から体調を崩して今まで全然治らない。どうしてくれる!』
『私は、警察にあなたを訴える!』とまで言っている。
さらに続けて、『8月にある日本人達がやって来て、私の体に変なものをくっ付けた』
『変な機械を私に向けていた』と片言の日本語でまくし立てている。

よく話を聞くとこう言う事だった。
この老婆はとある日系人で、その境遇から時たまアメリカ人や日本人の取材を受けていた。
私も去年の3月に彼女を取材で訪れた事があった。
8月の取材と言うのは、どうも他の日本人グループらしい。
去年の8月にとある日本人達がTV取材で彼女の元を訪れた。
彼らは、インタビューをするために、その老婆の胸に小さなマイクを取り付けた。
そのマイクは細いコードでバッテリーと繋がっており、そのバッテリーは正面からは見えないように彼女の腰に固定した。大きな音声マイクが頭の上にぶら下がっている。そうした物々しい状態でインタビューが始まった。カメラが老婆の体をなめ回す。老婆にとっては、『これは一体何なんだ!』と思ったのであろう。こんな事があった後に、たまたま彼女の体調が悪くなった。彼女は、これはあの変な機械のせいだ! と思い込んでしまった。それが冒頭の私へのクレームであった。

どんなに説明しても無駄であった。『あの日本人に会わなければ自分の病気は治らない!』『あの時の日本人の住所と名前を教えろ!』と盛んに私にからんでくる。その時は、朝の手配と仕事でとても忙しくこれ以上、老婆の相手もしていられない状況だった。途方にくれた妻のカオルは、朝の忙しい時では会ったが、老婆を説得して、何とか病院に連れて行ってあげたのである。

チュークの人たちの間には、今も原始宗教が綿々と受け継がれており、彼らの考える病気とは、その場所の悪いお化けが取り付いた!と解釈する。無人島で病気になれば無人島や海のお化けが取り付き、山で体調を崩せば山のお化けが取り付いた、と考える。そのような時には、その場所のものを調合して薬草をを造り、お化けを体の中から追い出してしまわないと病気は治らない!と思っている。
件(くだん)の老婆は、これは、『あの日本人に会って、然るべき処置をしなければ自分の病気は治らない!』と思ったようだ。
彼らの世界に棲みつくお化け達は、彼らの土着信仰はによって癒す事はたやすく、彼らの心を満たしてくれる。しかし、彼らの信仰世界の中に突然飛び込んできた現代文明のお化け達は彼らのこころをいつまでも蝕んでいく。
その日の夕刻、空港からの帰りにその老婆一行を見かけた。
『病院からの帰りにタクシーをずっと待っている』と言う。帰り道も一緒だったので、観光客用のバスにみんなを乗せてあげた。初めて乗るエアーコン付きのバスの中で、老婆の表情も明るくなった。
これで何とか一件落着であろうか・・・・。