今から76年前の1944年2月17日、18日の両日、日本の連合艦隊基地があったトラック島は、
アメリカ軍による未曽有の大空襲を受けた。トラック環礁を取り囲むアメリカ軍の艦隊は70隻。
航空母艦だけでも11隻。そこから発進される爆撃機や戦闘機は2日間で延べ1,200機を数えた。
加えて、軍艦からの艦砲射撃は軍事基地も民間人も現地人の区別もなく、砲弾が島を破壊した。
環礁内外にいた船舶はことごとく沈められ、その数は環礁内・外で80隻にも及んだ。
戦後から75年が経った今、これらの沈船は、世界中のダイバーが集まる沈船ダイビングのメッカでもある。
吉村朝之(よしむらともゆき)が、トラック島の沈船に出会ったのは、今から50年も前の事だった。
以来、吉村は憑り憑かれたようにトラック島の沈船に潜り始める。そのダイビング本数は実に600本にも及ぶ。トラック島の沈船に潜った観光ダイバーとしては世界NO-1 だ。彼はこれらの沈船がどこで建造され、どのような経緯でトラック島に来たのか、そしてトラック島でどのようにして沈められたのか、今、海底でどのように沈んでいるのか、犠牲者はどうなったのか、、、と1船、1船について詳細に調べ上げて行った。そしてすべての沈船に潜り、その集大成として出来上がったのが、彼の著書「トラック大空襲」である。
彼の死後、彼の遺影の1枚を奥様から託された。長い間私の手元にあった彼の遺影を、今日この大空襲の日に、花束と共にトラックの海に供える事にした。そして今、吉村は、彼が潜った沢山の沈船と共にトラック島の海に居る。