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南国を彩る鮮やかな花々。
何日も咲き続ける花もあれば1日で散って行く花もある。

そんな中で、夜に花を開き夜明けにはそっと人知れず散って行く花がある。
その名は「サガリバナ」(下がり花)。
名の通り垂れ下がった長い花の蔓に妖艶な花を夜毎咲かせる。
日没と同時に小さな蕾が膨らみ始め、1時間を過ぎた頃には写真のような見事な花を開く。
若葉と種子は現地の人達の大事な薬草でもある。

サガリバナ科の植物でもう一つ、やはり夜咲く花がある。
名前は「ゴバンノアシ」。
奇妙な名前の由来は、種の形が碁盤の足に良く似ているところからの命名だ。
ゴバンノアシも下がり花同様に、日没と同時に咲き始め、夜明けには散って行く。

いずれも海岸や水辺などの湿地帯に埴生しており、水面に落ちた花弁は夜の夢を再現させてくれる。
沖縄の西表島では、川面に浮かぶ花弁をめぐるツアーがあるほどだ。

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北緯7度のチューク(トラック)諸島。
2月も半ば近くとなり、夜半の夜空に南十字星が姿を見せ始めた。
これからの半年間、少しづつ高さと輝きを増して、南の島を訪れる旅人たちの心を慰めてくれる。
宇宙の歯車が見せる永遠とも思える時節のサイクルである。

そして今、そんな宇宙時計の時節の到来を予期させてくれる、もう一つの自然の時計がある。
“カポック”と呼ばれる巨大な綿の木だ。
南十字星が夜空にひっそりと姿を現し始める頃、カポックの綿のつぼみが一斉に開き始める。
南の島のどんな樹木よりも大きなこの綿の木は、周囲を圧倒するかのように島々を見下ろし
まるで、夜空に輝く星雲のように、島々の緑の中に点在している。

カポックの綿毛が宙を舞い、天に昇る頃、南十字星はいよいよその輝きを増す。

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個性豊かな造形美を誇る貝達の中でも、一段とユニークな形と構造をしている貝がある。
日本名を『オウム貝』、英名を『ノーチラス』と言う。
日本名は、白い大きな口がオウムの口に似ているところからこの名がある。

『生きた化石』と呼ばれるこの貝は、5億年も前にこの地球上で繁栄し、今も南の海の深海に生息しているとても珍しい生き物だ。
生きているものを『オウムガイ』、死んだ貝殻を『オウム貝』として区別している。

生きている『オウムガイ』は、殻の中に多くの隔室をもち浮力を調整し、深海から浅海を自由に行き来できる特殊な機能を持っている。
死んだ後の『オウム貝』は、この隔室のおかげで海面に浮き、洋上を漂い世界の海を旅する。

英名の『ノーチラス』はここからきている。
ノーチラスとは“海洋を旅する水夫”を意味するギリシャ語だ。
ジューヌ・ベルヌの『海底2万里』に出てくるモネ艦長の『ノーチラス号』、そして、
世界初のアメリカの原子力潜水艦『ノーチラス号』もまた、このたぐい稀な機能を持つオウムガイの英名
『ノーチラス』からとったものだ。

オウムガイの死んだあとの貝殻は希少な貝として、収集家の間でもとても人気があるだけでなく、生物学会の中でも貴重なものとして重宝されている。

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最近は、各地で高潮被害が報告されている。長い地球の自然のサイクルと考えれば致し方のない事かも知れない。ところで、悪者扱いされるこの高潮君だが、たまにはいい事もある。
南の島の無人島は大概が周りを遠浅のさんご礁で囲まれていて、通常はなかなかボートが入る事が出来ない。しかもいつも大きな磯波が打ち寄せていて泳いで上がる事も難しい。そんな時、高潮や満潮ともなれば一気に水位が上昇し、ボートも難なく無人島の浜辺にあがる事が出来るようになる。そんな無人島が幾つかある。そして、そのような無人島の周りを泳いで見るととても良くサンゴが発達していて驚く事がある。もう一つ、高潮や満潮で私が嬉しいのは、サザエが獲り易くなることである。チュークのサザエは、波の荒い浅いサンゴ礁の岩ノ下に棲んでいる。このようなところを泳ごうものなら、ズボンに長袖でも体はサンゴでズタズタにされてしまう。そこで、高潮君の出番だ。1m近くも水位が上がり、浅いサンゴ礁でも楽々泳ぐ事ができる。私がポケットいっぱいにサザエを入れて泳いでいるのはいつもこんな時だ。
次の大潮にうまくスノーケルのお客様が来ることを願っている。。。

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チューク地方で重宝されている貝の1つにトウカムリがある。
人間の頭程の大さがあり、数多い貝の中でも大型の部類に入る。
和名の『トウカムリ』は、唐時代の冠に似ているところからこの名がある。
英語名はそのままズバリ、『ヘルメットシェル』である。
亜熱帯から熱帯にかけて広く世界の海に分布している。
チューク地方ではその形状から、食器や容器、鍋の代用としても用いられた。
このように古来より南の島の人たちに重宝された貝として、海洋考古学の資料としてもとても貴重なものである。大きな貝であるから、当然中身も大きくて、食糧としても大事なものである。
チューク地方では、茹でて中身を取り出し、塩漬けにして、大事な副食品として食されている。

トウカムリにはもう一つ、変わった用途がある。
日本でよく、野武士や山伏などが、ホラ貝を吹き鳴らしている図を見かける。
あの法螺(ほら)に使われているのが、このトウカムリである。
チューク地方でもホラ貝はよく使われるが、同様にして、このトウカムリも古くから法螺の材料として重宝されてきた。ホラ貝よりも中の隔壁が大きく、低くて太い音が出るのが特徴だ。
ホラ貝と違った音を出すところから、様々に使い分けられてきたと言う。
そしてこのトウカムリは、益貝で、サンゴの敵・鬼ヒトデの天敵でもある。
南の島の人達に貴重な道具を提供し、美味しい食べ物を与え、大事な海産物の棲みかである美しいサンゴ
を守ってくれる、とても大切な生き物なのだ。
別名の『センネンガイ・千年貝』は、古くから、南の島の人達の生活を潤してきたこの貝のニックネームにピッタリの名前である。

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