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チュークに『ボイス・オブ・トラック』というラジオ局がある。チューク州政府で行なっているチューク地方唯一のラジオ局である。周波数を合わせると、チューク独特の音楽に混じって、アナウンサーがチューク語で盛んにしゃべっているのが聞こえてくる。

モエン島以外の島々には電気がなく、従って電話はまったく無い。そこでこのラジオ局が、島人達の恰好の連絡手段となっている訳だ。政府からの通達事項に混じって、個人のメッセージが次々と流れてくる。冠婚葬祭のお知らせ、店の大売出し、市場からの魚の入荷、飛行機の遅延、個人の忘れ物や落し物、運動会の実況中継、個人から個人への依頼事項など、何でも来い! である。要するに、一方通行の電話と思ってもらえば良い。

このようなメッセージのアナウンスの事を、チューク語で『ハッピョウ』と言う。これは日本語の『発表』から来ている。そのハッピョウを聞いていると、島人達の生活振りが判ってとても面白い。
今日本では、個人情報の開示や保護が問題となっているが、ここチュークではそんなことは全くお構い無しである。人の秘密もプライバシーもあったものではない。自分向けのメッセージを聴いていなかった本人の為に他の人がわざわざ教えてもくれる。全てを公開して、全てを判り合って始めて彼らの運命共同体の社会生活が成り立つのである。ラジオハッピョウは全ての個人情報を共有する彼らのシンボルでもある。