2006年07月

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観光で訪れる南の島は、現代人にとっては夢の空間だろう。
ところが家庭を構えて住んでいる我々にとっては、何かとストレスも多く、遊びの島と生活の島の状況はガラリと一変する。末っ子のヒロミが卒業した学校から、在籍中8年間の成績表が届いた。
これから上の学校に進学する場合の大事なデータになるものだ。
ところが、その成績表を見た妻の顔が一変した。思いもかけない低い成績表示がずらりと並んでいる。
この8年間で一度も取った事の無い見覚えの無い数値である。この8年間毎日毎日、ヒロミと喧嘩をしながらなだめたりすかしたりしてやって来た妻にしてみれば、脳天をハンマーで叩き割られたようなショックだった。早速彼女は、学校に行きクレームをし、説明を求める。
学校側は謝るでもない。『生徒の成績は、ちゃんとコンピューターに入っている。』と平然として言う。
見れば、でたらめだらけの成績表である。
妻は、家に取って返し、過去の1年1年の成績表をすべて携えて、再び学校に乗り込む。
そこでやっと学校側もミスを認めた。後日、きちんと作り直して届けると言う。
実はこの成績表うんぬんに関しては、毎度の事で、その都度妻のかほるは学校にクレームをしている。
なんとつい最近も、8年生を卒業した時の成績表にも大きな間違いがあったばかりである。
その直後のこのざまだ。ところが、このような信じられぬ事柄はここチュークでは日常茶飯事の出来事で、日本人としてのプライドを捨てない限り、あるいは、チュークでの生活を続ける限りこのようなストレスから逃れられる術はない。
そして、そんなストレスを帳消しにして、余りある程の楽しみを提供してくれるのもまた、南の島の魅力なのである。

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7月始め、日本から帰ってきてからというもの、連日海に出ている。
この後も、8月の繁忙期を控え、9月の20日過ぎまで殆ど休みなど、望めそうにも無い。
島内観光や戦跡めぐり、島めぐりや無人島めぐり、友好親善ツアー、フィッシング、ダイビング、無人島泊まり、新聞取材、学術調査、政府のミッションツアー、などなど、様々なツアーのガイドとして、海に陸に、水中にと連日駆けずり回る事となる。初めてのお客様もいれば、何度も何度も足を運んできてくれている人たちもいる。そんな人たちと一緒にチュークの島と海の大自然を謳歌できるのは、仕事と言えどもとても楽しい事である。かつてチュークに移住を決意した若かりし頃、『なんにも無いチュークだから、逆に何でも出来る』と啖呵を切ってやってきたチュークであった。30年の歳月が過ぎ、紆余曲折を経て、まがりなりにも今、チューク観光ガイドとして誇りをもって仕事に取り組んでいる。
チュークに様々な夢を抱いて訪れる方達にその夢を十二分に叶えてあげたい。
若い頃に抱いた夢が、今少しずつ花を咲かせ始めている。

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通称・パシィフィックサーモンと呼ばれているこの魚は大きなものは10キロほどにもなる。
釣り上げると鮮やかな薄青い模様が浮き出てきて、その青がとても綺麗でフィッシングの対象魚としても人気がある。我が家で好んで食べる魚の1つでもある。釣りに出かけてアオチビキが釣れると、思わず顔がほころぶ。そして、頭の中は、早くも夕食のメニューの事でいっぱいとなるのである。
この魚は、どんな料理にも向いており、真アジ同様、白身魚と赤身魚の特色を備えた重宝魚で、その味は天下一品である。塩焼きはもちろん、寿司・刺身、テンプラ、フライ、から揚げ、煮魚、とどれをとってもトップクラスにランクされる。このアラで作る潮汁は正に絶品で、しかもスープが冷めてからでも臭みが無く、美味さが損なわれる事がない。エラとはらわた以外には、全く捨てるところが無い。
毎年チュークにやって来る、とある友人のグループの為に、鮮度のいいアオチビキを用意する事は、今や恒例となってしまった。

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南の島では、釣りやダイビングそしてシュノーケリングなどをしなくても、ボートの上からでも魚を見る事は多い。ボートで洋上を走っている時には、トビウオがボートの傍から飛び出しまるで鳥の如くに洋上を滑空していく。ナブラの群れに当たると、カツオやマグロが盛んにジャンプしているのも良く見かける。イルカの群れやマンタを見かける事はしょっちゅうだし、時にはクジラやシャチを見かける事もある。そして、ボートで無人島の浅瀬や砂地の浅場に入っていく時には、ナポレオンフィッシュ、カンムリコブダイ、ヒラアジ、海亀、エイ、サメなどの大きな魚をよく見かける。透明度の高い南の島ならではの事ではある。今日もダイビングの合間にとある無人島に上陸した。
水深が1~2m程の広い砂地の海域に入った時、大きなエイがゆっくりと泳いでいるのが見えた。
しばらく浅場を追いかけながらその悠然とした泳ぎを楽しんでいると、もう一匹の大きなアカエイがボートの周りを泳いでいるのが見える。そうしてエンジンが砂地につくほどに浅い場所に来た時に、今度は1.5m程のおおきなバラクーダーが、『オレを見ろ!』とでも言いたげに、ゆっくりとボートから離れて行った。

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南の島にはサメが多い。スノーケリングやダイビングでも必ずお目にかかれるし、無人島の浜辺で遊んでいても、小さなサメが背びれを立てて泳いでいるのをよく見かける。『サメ』と聞けばすぐに、映画などの人食いザメを思い浮かべ、怖さを連想するが、実際にはそうでもない。ダイバーにとっては、人気の魚の1つだし、釣り人にとってもそのパワーと迫力はとても人気のあるところでもある。かつて私もサメをエサで集めて、ダイバー相手にシャークショーをやっていた事もある。今日もフィッシングのお客様をご案内していて、そのド迫力に圧倒された。大物の魚がヒットした。水深は100メートル。渾身の力を振り絞り大物との力比べ、一進一退の末、やっと水面近くまで引き寄せたそのとき、4~5匹のサメがバシャバシャと大きな音を立てながら釣れた魚に襲い掛かる。あっと言う間に魚は跡形も無く消えて、魚のいなくなった針には大きなサメが掛って暴れている・・・・。
そんなフィッシングのとあるポイントをダイビングで潜った事がある。
いるはいるは、そこには50キロを越すイソマグロをはじめ、沢山のイソマグロやカスミアジなどが泳ぎ回っている。そして、そんな大物の魚と同じくらいの数のサメが、これまた魚の周りを悠然と泳ぎ回っていた・・・。

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6月になり海も静かになってくると、ダイバーの数が増えてくる。
そういう訳で最近はダイビングのガイドとして海に出る日が多い。
通常は水面から見る海の中を、魚達と一緒になって水中を泳ぎ廻るのはまた、格別の気分だ。
いつもフィッシングのお客様と一緒に釣り上げている大物の魚や、サメなどもすぐ近くを泳ぎ廻っている。かわいい熱帯魚の群れが、サンゴの花畑の中でダイバー達の周りに群がっている。
眼もくらむような、水中の大絶壁の中を潮流に身を任せ浮遊する様は、まるで宇宙を漂う観がある。
数年前に人魚を題材とした小説を呼んだ事がある。地球に存在する人魚族を題材にした内容なのだが、この本の事ががとても気に入っていて、海に出るたびにその世界に入っていくような、不思議な感覚をいつも覚える。仕事の繁忙さとストレスを忘れ、水中で過す数時間は、きっと私も人魚になっているのかもしれない。

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周囲200キロメートルのチューク環礁には、大小合わせて100個近くの島がある。
その中で、人が住んでいる島は20島、その他の80個近くは全て無人島である。
大きものは長さ3キロ近くのものから、やっと木が生え始めた小さなものもまで様々である。
そしてそんな無人島の倍に近い数の浅瀬や小さな砂浜がまた、環礁内の随所に点在している。
それらの無人島や浅瀬は、古来より海産物を重要な食料としてきた現地の人たちにとってはかけがえの無い財産でもあり、同時に島人たちの恰好の遊びの場ともなっている。
これらの無人島は全てが現地人達の所有となっており、観光客が何処にでも自由に行けると言うものではない。持ち主と交渉し、彼らの善意の元に我々はお客様を無人島にご案内しているという訳だ。
海が静かになったこれからの夏場、これらの無人島は観光客に夢の世界を提供してくれる。

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北緯6度~7度のチューク地方。この熱帯の南の島々にも少しずつ巡ってくる季節を感じる。
3~4月から燃えるような真っ赤な花を枝いっぱいにかぶっていた南洋桜も、7月の声を聞くと段々と赤い帽子から緑の帽子に移りはじめる。5月も過ぎ6月になると北東から吹き付ける貿易風も穏やかになり、海も静かになってくる。枝からこぼれんばかりに成っていたマンゴウも今は無く、緑の葉っぱだけがその巨木を覆っている。収穫期の長いパンの実は相変わらずで、今が正に最盛期と言ったところだ。そのパンの実も8月も過ぎる頃になると、少しずつローカル市場からも姿を消し始める。これからの数ヶ月間は海が最も静かな時期で、チュークの人たちにとってはとても生活しやすい時期でもある。パンの実が豊富にあって、魚介類も沢山獲れるこの時期は、神が与えた時期だと彼らは言う。そして海の静かなこの時期は、チュークを訪れる旅人達にとってもまた、同じように神が与えた時期だとも言えよう。
今年もまた穏やかな日々が続く事を祈っている。

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